君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
指差されたクローゼットの片隅から、ネクタイを選ぶ。

さっき荷造りしていたのと、今着ているスーツに合いそうなのを、2本取り出した。

といっても、たいていダークグレーのスーツに、モノトーンのワイシャツなので、何を選ぼうが合うんだけど。



「支局の偉いのと、同席らしいから」



一応な、と手を休めずに言う。



「送ってやれなくて、悪い」

「いえ、まだ時間早いですし」



驚異的な速さで荷物をまとめ終えた新庄さんと、家を後にする。


駅までの、誰もいない夜道で交わしたキスは、当然ながらお互い未練たっぷりで。

いや、新庄さんはすでに半分頭が仕事のほうに行っていたので、どちらかというと私のほうが未練たらたらで。


別に新庄さんが悪いわけではないけれど、どこかに不満をぶつけたくて。

気づけば、離すまいとでもするようにスーツの襟を握りしめていた手を、シワになる、と新庄さんが笑って外した。


呪われているとしたら、いったい誰にだろう。



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