君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「ふーん…」
なるべくかいつまんで、これまでの話をしたところ、新庄さんは、ゆっくりと煙を吐きながらつぶやいた。
「そいつ、マーケに来ないかな」
「その発想、堤さんと同じです…」
新庄さんは、ふんと笑うと、短くなった煙草を消して、新しい一本を取り出す。
「なら、堤がなんとかしてくれるだろ」
楽しみだ、と低くつぶやくのが聞こえた。
三ツ谷くん…大丈夫だろうか。
新庄さんのことだから、不当に痛めつけたりはしないだろうけど、格の違いを見せつけることくらいは、大人げなく、するだろう。
でも、三ツ谷くんなら、そこそこ応戦するかもしれない。
「誰もが通る道だよな、お前の悩み」
そう言われて、そうなんだろうか、と首をかしげる。
「6部は、ずっと新人が来なかったから、ダメージのでかい時期に、その道を通っちまったな」
つらかったな、と頭を叩いてくれる。
「新庄さんも、通りましたか」
「俺は、そういうのは、ない」
誰もが通るんじゃ、ないんじゃん。
器が違うと、通る道も違うんだろうか。