君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
どうする? と、新庄さんが伸びをしながら訊いてきた。


「会社行くなら、送ってくけど」
「熱が下がりきってないのに、運転なんかしないでください」


新庄さんは、そのくらい別に平気だ、とかなんとかつぶやきつつも、おとなしく言うことを聞いた。


「まさか出社しませんよね」
「今日はやめておく。この状態の時、途中で無理してよかったこと、ないから」


安心した。
けど、新庄さんが自主的に休むなんて、いったいどれほどの不調なんだろう。


「家で仕事するのも、ダメですよ」


答えない。
するつもりだ。

目を使うと身体に障るのに、と思いつつも、一日休んだぶんを取り戻す大変さはわかるので、あまり強くは言えない。

と、テーブルの上にあった、新庄さんの携帯が震えた。
新庄さんは、開けて相手を確認すると、画面を私に向けてみせる。


『着信:堤和之』


思わず、目を見あわせる。


「呪いではないようですけど…」
「盗聴でもされてんのか?」


そうかも…と思っている間に、なんだ、とぞんざいに新庄さんが出た。
耳を近づけて、私も聞く。


『お前まで休みとるとか、電話したくなるようなマネ、やめろよ』
「大塚が世話になったらしいな」
『機嫌いいね。長くお預けくったみたいだけど、ようやくか』


なんでこいつが知ってる、という目を私に向けてくる。
いたたまれず、目をそらした。

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