君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)


「誰もが通る道だー」
「それ、新庄さんと同じ台詞」


久々に会った彩と、夕食を食べに出た。
最近、会社で食事をとる暇なんてなかったので、安らぐ。


「彩は、後輩いるもんね」
「1年下だからねえ。上から見りゃ、たいした違いないんだろうなって、かえって冷静に自分を見つめたよ」


うどんをすすりながら、彩が言う。


「でもさ、今のあたしたちの年次だと、そこそこプライド、あるじゃない」
「それだ」


それが、新庄さんの言う「ダメージのでかい時期」だ。
逆に、もう少し後なら、新人と自分を並べることなんて、しなかっただろう。


「社会人経験の有無は、大きいよ。どんなに経験積んでるったって、先月まで学生だったわけでしょ」
「よく考えたら、そうなんだけどね」


勝手な気負いのせいか、すっかり視野が狭くなっていたようだ。

そもそも、三ツ谷くんが私にちょっかいを出したりしたのも、いけなかった。
それで、すっかり混乱してしまったんだ。


「ま、なんだかんだ、いい刺激だよね、新入社員は」
「だねえ」


冷たい麺でもよかったかな、と思うくらいの陽気で、6月の本配属では、いったいどんなことが起こるんだろう、と考えた。

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