君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
翌日は、三ツ谷くんの、研修最後の日だった。
先週撮影した写真をざっとあてこんだラフを持って、一緒に小出さんとの打ち合わせに出かけた。
「このページは、2パターン出させていただいてます。これはもう、好みですね」
「うん、ちょっと考えてみる」
小さな会議室で、紙の海に埋もれそうになりながら、小出さんが、ふと三ツ谷くんを見た。
「三ツ谷さんも、何か意見あったら、遠慮なく言ってね」
三ツ谷くんは、ちょうど言いたいことがあるらしく、許可を求めるように私を見る。
いいよ、とうなずくと、中ほどのページを指して言った。
「この見開き、前後がちょっと似た構図が続くので。もう少し、違いがあったらいいなと」
示す場所を見て、私と小出さんも、なるほどとうなずく。
何度も見ていると、だんだん鈍くなっていく部分を、さっと見抜いてくれた。
私は赤ペンをとると、ラフに線を引きながら提案した。
「真ん中のカットを思いきり寄って、このへんまで拡大しましょうか」
「できる?」
「写真素材次第ですね…」
ちょっとお待ちください、と断って、簡単なデザイナーも兼ねているカメラマンに電話をする。
概要を説明すると、すぐやってみる、と言ってくれた。
持ってきていたPCを開いて、電話を肩にはさんだまま、修正した画像を受け取る。
よさそうなので、急な要望に応えてくれたことにお礼を言って、電話を切った。
「こんな感じです。いいと思いますよ」
PCを小出さんに見せる。
三ツ谷くんも、のぞきこむ。
「いいね、ぜひこっちでお願いします」
「はい」