君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「可愛いな」
えっ。
奈保を降ろした新庄さんの言葉に、穏やかでない気持ちになる。
私ですら言ってもらったことないのに。
「そりゃ、奈保は可愛いですよ」
「なんだ、その言いかた」
ふてくされた声になったのを、鋭く気がつかれた。
「そんなの、言われたことないので」
「誰に?」
誰にって…。
「新庄さんに決まってるでしょう」
軽くにらむと、新庄さんはぽかんとして、続いて、楽しそうに吹き出した。
あ、そう、とやけに機嫌よく、車を走らせる。
面白がるところじゃないだろ、と腐った気分で窓の外を見ていると。
「俺は、言った」
そう断言されて、面食らう。
「嘘」
「言った」
「いつ?」
ちょっと間があって「この間」と返ってくる。
この間って…と考えていると、にやにやと笑う新庄さんと視線がぶつかる。
この間の――夜ってことか!