君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)


「可愛いな」


えっ。

奈保を降ろした新庄さんの言葉に、穏やかでない気持ちになる。
私ですら言ってもらったことないのに。


「そりゃ、奈保は可愛いですよ」
「なんだ、その言いかた」


ふてくされた声になったのを、鋭く気がつかれた。


「そんなの、言われたことないので」
「誰に?」


誰にって…。


「新庄さんに決まってるでしょう」


軽くにらむと、新庄さんはぽかんとして、続いて、楽しそうに吹き出した。
あ、そう、とやけに機嫌よく、車を走らせる。

面白がるところじゃないだろ、と腐った気分で窓の外を見ていると。


「俺は、言った」


そう断言されて、面食らう。


「嘘」
「言った」
「いつ?」


ちょっと間があって「この間」と返ってくる。
この間って…と考えていると、にやにやと笑う新庄さんと視線がぶつかる。

この間の――夜ってことか!

< 82 / 89 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop