君しかいらない~クールな上司の独占欲(下)
「三ツ谷くん、次、第5会議室だよ」
三ツ谷くんのメインの指導係となった高木さんが、声をかけた。
私は高木さんと仕事がかぶることが多いため、サブ的にそれを補助することになっている。
一時的に、高木さんと私の間に設けた席にいる三ツ谷くんは、はい、と立ちあがりかけて、私を見た。
「大塚さん、一緒じゃないんですか?」
「私は、最新の資料をコピーして持っていくので。高木さんと行っててください」
手伝わせてください、と三ツ谷くんが言ってくれる。
了承をもらおうと高木さんを見ると、うんうんとうなずいて。
「じゃあ先に物件の話しとくから、資料できたら合流して」
そう言って出ていった。
三ツ谷くんは私を見て、さっぱりと整った顔で、にこりと笑った。
オフィスと同じフロアに、各部共有の印刷室がある。
「部署のIDカードがあるんですね」
「こういうのも、企画にかかった経費のうちだからね」
何台かの複合機や裁断機が置かれた殺風景な部屋で、ふたりきり。
ぎりぎりまで修正していた資料を複合機にかけ、人数分のコピーをセットする。
機械の基本操作を教えてしまえば、あとは刷りあがってステープルされるのを待つだけだ。
「営業って、もっと女性もいるのかと思ったんですけど、意外と少ないですね」
「部署にもよるかな。うちも、前はもうひとりいたんだけど、退職しちゃった」
「本当に離職率、高いんですね」
そうだねえ、と言って笑う。