過去にはさよならを。
「きら、あんたのこと呼んでんだけど返事しなよ。って………聞いてる?」
あー、うるさいうるさい。
あたしはしつこい声を無視して、好きな時間を充実させるように楽器と向き合う。
「人の話を聞かん………かい!!」
『ぷあぁ…………!』
突然、膝の裏に衝撃を受けてあたしの楽器が不快音を出してしまった。
「…何。いつも言ってんじゃん。“楽器吹いてる時は必要最小限、話しかけないで”って」
「は…?必要だから呼んでんじゃん。じゃなきゃ、あんたに話しかけないっつーの」
あたしは膝カックンをした同じパートの真理(まり)を睨み付けたが、
真理も負けじと下からあたしに渾身の睨みを落とした。