妬こうよ、そこはさ。
掻き乱した感情論は二人とも本意じゃない。


お互い理詰めを得意としていて、お互いにとっての最善を最良と考えている。


だから喧嘩はしたことがないけど、それ故にささいなすれ違いは相手を慮って流される。


私が抱える感慨は、おそらく、そうやって積もってきたものだ。


ヤキモチを妬いてもらおう、なんて、こんな陳腐な作戦で何かが変わるとは思っていない。


それでも、変わったらいいと願ってしまうくらいには、私は彼が好きだ。




休日は平日より三十分遅く起きる習慣。でも、平日のアラームに慣れてしまった私の脳が、いつものように動き出す。


彼は休日はよく寝る。


私よりも早起きで遅寝な平日を繰り返しているから、溜まった疲れを休みの日に取り払っているんだろう。


鳴ってしまう前にそっと目覚ましを止めて、隣で眠る彼を起こさないように起き上が、


「…………」


れなかった。


端整な顔を緩めながら、寝ぼけた彼が私を捕まえている。


「ばか……、すげーさむい……」

「…………あなたは充分温いよ」


ほぼ無声音で呟きを落として、呆れた眼差しを送る。


服越しに伝わるほど高い子どもみたいな体温をしておきながら、何を言っているんだろうか。


すぐに布団を被せるのだ。今は季節的に少し寒いかもしれないけど、どうせ一瞬の寒さなんて問題じゃないでしょう。


あなたは元々平熱高いし。
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