妬こうよ、そこはさ。
「おはよう」

「おはよう……」


ふあ、とその口からあくびがもれる。


隠す大きな手は、ゆるゆるとまぶたを擦っていて、一拍遅れた。


眠そうだし、髪ぼさぼさだし、着替えてないし。


……本当に朝に弱い人だ。


彼は普段とても冷静でひどく無表情で、いかにもできる男な雰囲気を醸し出すくせに、朝には滅法弱い。


「いーにおいする……」

「おかずの希望は」

「べーこんかりかりにしたやつ……あとよーぐると……」


しまった、もうグレープフルーツを切ってしまった。もったいないけど今朝は奮発ということにしよう。


フレンチトーストとベーコンだけでは寂しいし、適当にサラダに使っていない野菜でお皿の空白をもう少し埋めて、と。


私がそうこうしている間に、むにゃむにゃ言いながら二度寝を始める旦那さん。


半目でキッチンを見遣ったけど、当番は自分だ、というところまでは認識が追いつかなかったんだろう。


寝起きのときに限って、彼の鋭い判断力は著しく低下するのだ。


がくりがくりと盛大に舟を漕ぎながら、目をしばたたく。


旦那さんは考え込むようにこてんと首を傾げたものの、その勢いのまま結局ソファーに座って、というか、ころりと丸まって前から倒れ込んだ。
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