妬こうよ、そこはさ。
今日一日をよくよく振り返ってみて、先程と同じ結論が出た。


『奥さんが拗ねた』。


というか、妬いたんだと思う。


おそらくこの一言に尽きる。


起きてしばらくしてから、何故かおかしな行動を繰り返していた奥さん。


だからてっきり俺は、具合でも悪いのかと心配していたんだけど、多分これはヤキモチだ。


そうと分かったなら、確認をしたくなるというもの。パスタをゆでながら、背中越しに声をかける。


「なあ。もしかして、妬かせようとしてた?」


お皿を並べていた彼女はぎこちなく振り向いた。


「……分かりやすかった?」

「結構。やっぱり妬かせようとしてたんだ」


上機嫌な俺に、むすりとどこか不機嫌に顔をしかめる奥さん。


「ねえ、妬いてよ、そこはさ」

「え、なんで?」


聞き返したら眉根を寄せられて、変だな、と思いつつ申告する。


「俺今回すごい妬いたけど?」

「え」


……え?


奥さんはぽかんと固まった。

珍しい表情は、奥さんが本当に驚いていると明確に示していて、安堵していいものか、少し複雑だ。


自分としては独占欲が丸わかりの行動だったから、超絶かっこ悪い悶絶ものだどうしよう、とか思っていたのに、肝心の奥さんに気付かれていなかったらしい。


「というか、好きだなって思ってるだけじゃ、駄目なの」

「……あんまりよくない」

「分かった。じゃあ、言うようにする」

「うん」


言うと宣言したのだから、何か挙げた方がいいだろう。


思い浮かぶままに声をのせる。
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