妬こうよ、そこはさ。
「俺は君の結構無表情に見えて感情豊かなところとか、赤くなるときは耳だけなところとか、案外掃除が嫌いなところとか、料理が上手いところとか、眠いとどこでも寝られるところとかが好きで、」

「え、今?」


瞬きする。


「今じゃないの?」


むしろ言うタイミングは今しかないと思ったんだけど、違っただろうか。


「小分けにしてくれると……」

「いやでも、好きだなって思ったときに言うようにするってことは、『今の可愛い』とか言うってことだろ」


惜しむ彼女に首を振って、俺は至って真面目に考察した。


「今までのぶんは今のうちに言っておかないと、どんどん言いたいこと増えてくし」


言葉にしていないだけで、思いはあるのだ。


「あ、そういえばこの間のあれも可愛かった、とか付け足したら間抜けすぎだろ、俺」


そんなのは嫌だと思っていると、真っ赤な顔で。


「……いい」


湯気が出そうなくらい、真っ赤な顔で。


「いい、よ」


彼女が声を絞り出す。


「ん?」


暑さが引かない奥さんに、俺はわざとらしく首を傾げてみせた。


「もういい。分かった。…………やっぱり、言わないで」


あ、やばい可愛い。


ん、と笑って「あのさ」と呼びかける。


「今すごい可愛い」

「だからっ、言わないで……!」
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