妬こうよ、そこはさ。
真っ赤すぎて可愛い。


「おねがいだから、いわ、ないで」


普段表情が動かないからほんと可愛い。


いや、鉄壁の無表情も好きなんだ、真っ直ぐ通る芯が垣間見えて、いつもの凛としたたたずまいも、好きなんだけど。


この可愛さはどうしようもない。


「分かった。あのさ」

「何」


真面目な面持ちを心がける。


「不安にさせてごめんな。記念日とかには、絶対言うから」


決意表明をすると、奥さんがいささか勢いよく顔を上げた。


……そうか、そうだよな、やっぱり言って欲しいよな。


欲しいものなんて聞いても教えてくれない奥さんが、これだけの反応をするのだ。叶えてみせよう、と決意。


俺を励ますように、奥さんはまだうっすらと赤みが残る頬を柔らかく緩める。


「頑張って」

「頑張る」


そっと、穏やかな約束を結んだ。
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