妬こうよ、そこはさ。
「でも、何で気付かなかったんだろうな」

「ん?」


実は密かに気になっていたのはそこだ。


「俺が妬いたの、分かりやすかったと思うけど」


唸って少し考え込んだ奥さんは、思いも寄らないことを言った。


「ヤキモチを妬かせたくて、頑張ってその内容を考えてたからだと思う」


どういうことか、と首を傾げた俺に、再度説明してくれたところによると。


一生懸命作戦内容を考えすぎて、肝心の俺の反応を見逃した、らしい。


「…………」


何だそれ、と思った。

ごめん、と言われた。


……ああ、知ってるさ。


俺の奥さんはほんの少し天然なんだ。


「ごめん」

「いい。でも、次から気付いて」


二人とも、気持ちが読めない訳ではない。


もう長いこと一緒にいる。


大体の経験則で分かるには分かるのだ。


この仕草をしたから、今考えていることはこうだろうな、とか。

この表情は、こういうときのだよな、とか。

この間は、多分、こういうことを考えているんだろうな、とか。


予測することはできる。


経た年月から、好き嫌いも学んだ。


お互いに相手の考えが分からないと、寂しいのも知っている。


それならば後は行動するだけだ。


だけど、俺たちは行動するのが下手だった。


ちょっと残念なくらい、予想外すぎるくらい、そう、呆れるほど下手だった。
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