妬こうよ、そこはさ。
渦巻く感情を止めるように、チンとレンジが鳴った。


彼の手元の深皿には、彼に言わせれば薄味の煮物がよそわれている。


他のものはそんなことはないのに、煮込み料理や煮物だけは、彼が作ると味が濃い。


私のさじ加減では味がしみていないらしい。


味を濃くするのは嫌なので、煮物を作るときは人参を花形にする。それで相殺。


タコさんウインナーだとか、可愛いお弁当だとか、そういうものは大抵否定的なくせに、花形の人参は嬉しい人なのだ。


「お、人参花形じゃん」


ラップを払って湯気がたつのを見ながら、彼が頬を緩めた。


「煮物だからね」

「これでもう少し味濃いとさらに嬉しいのに」


ほとんど聞こえないくらいの小さな呟きでも、さらに、とちゃんと付けるところがいい。


「じゃあ今日は寂しく白飯にして、明日どうぞ」


一晩置けば味もしみるでしょ、と意地悪く言えば、彼は真剣な表情で首を振った。


「それは嫌だ。今日作ってくれたものは今日食べたい」
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