Rolling Love
 大学に入って初めての夏休みは、2か月もあると油断しきっていたら、思った以上にあっという間に時間が進んでいった。週に3日入れているバイトは夏休みだからという理由で8時間フルタイム勤務、8時間働くのなんてまだまだ慣れないからやっぱり結構疲れる。加えて両親の荷造りの手伝いとか、家の中のもろもろをおさらいしたりだとか(何かあった時のためなのだけど、日曜大工用のドライバーなんかの在り処なんて知らなかった)、念のための自分の部屋の整理だとか、そういうことをしていたらいつの間にかリビングの日めくりカレンダーは8月17日になっていた。うう、子供の頃より時間が過ぎるのが早い気がする。なんだか泣きたい。
 そして8月18日、お父さんはお母さんを連れてアメリカに旅立っていった。

「璃子、何か分からないことあったら電話するんだぞ。あ、時差は考えてくれ、な」
「うん、分かった」
「近況報告もしてね?時々でいいけど、こっちもメールするわ。しばらくはバタバタすると思うけど」
「うん。落ち着いたら連絡してね、お母さんのバタバタって1カ月くらい続きそうだし、慣れるまで大変そうだし」

 それじゃあ修哉くんと高原の両親によろしく、なんて呑気なことを言いながら、二人は仲睦まじく空港の搭乗ゲートへと向かっていった。娘も親戚の青年も信用してくれてるのはとても嬉しいしありがたいんだけど、それにしてはお父さんがやけにあっさりしてたなぁ、と思いながら踵を返す。
 振り返ると、ガラス張りの大きな窓の向こうで今まさに飛行機が離陸しているところで、こんなところからじゃあとても飛行機からは見えないだろうなぁ、とは分かっていたけれど、思わず手を振らずにはいられなかった。
< 13 / 21 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop