Rolling Love
「おかえり、璃子。暑かったでしょ、何か飲む?」
「ただいま、お母さん。んー、アイスコーヒーでいいや。鞄、置いてくるね」
リビングに顔を出すと、案の定お母さんがダイニング・テーブルをお店屋さん状態で独占していた。わたしが高校に入った頃から暇を持て余したお母さんは手芸にハマるようになり、ここ1年ほどはパッチワークに精力的に取り組んでいる。今は季節に合わせてハワイアン・パッチワークをしているようで、色とりどりの布たちがテーブルの上に広げられていた。
自室に鞄を置いてリビングに戻ると、先ほどまでのお店屋さん状態はどこへやら、きちんとスペースが開けられてアイスコーヒーがコップに注がれてわたしを待っていた。その横には、きらきらと光るゼリーが添えられている。
「こういう日はおやつも涼しくなくちゃねぇ」
「やった!ありがと、お母さん」
綺麗な薄緑色のゼリーは、たぶん某高級店のものだと気付いて、わたしは思わず勢いづいて椅子に腰かけた。知ってるんだ、毎年親戚のおばさんがここのゼリーをお中元に送ってくれるの。まだ少し時期としては早いけど。きっとそうなのだろう。
がぶ飲みはよくないというのは分かっているものの、さっきまで屋外にいたので、冷たいものが無条件に恋しい。一気に半分ほどアイスコーヒーを飲み干すと、お母さんがちょっとだけわたしの顔色を窺っていた。