Rolling Love

「修哉くんだって考えて決めてくれたんだから、気になるなら修哉くんに聞けばいいじゃない」
「えーーーーーっ、無理だよ……何言ってんのお母さん」

 相変わらずどこかほわほわとしていて付け入るスキがあるようでない母を尻目に、落ち着こう、とわたしはアイスコーヒーを口に含んだ。いつもなら心地よい苦みが、なぜだかよく分からない。不味いわけではないことは分かるのだが、味としてどうなのかと聞かれると答えようがないくらいなのだ。さっきはあれほど美味しく飲めたのに。混乱しているのだ――と、そう思った。そのくらいは、認めなくちゃいけない。

「でね、お盆明けには修哉くん来るから、部屋の片づけとかしておくのよ?」
「え、お盆明け!?なんで!?後期始まってからでいいんじゃないの!?」

 さらりとお母さんが続けたその言葉は、ただでさえ混乱していたわたしに追い打ちをかけるものだった。今日は8月4日。「お盆明け」を遅めに見積もったとしても、修ちゃんがうちで下宿を始めるのは半月後、ということになる。てっきり夏休みの間中は修ちゃんも実家に――高原家に帰っているものだとばかり思っていたわたしは、思わず声を荒げた。
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