Rolling Love
 だけど、修ちゃんが引っ越しちゃってからは、そこまで頻繁に連絡してたわけでもなかった。お互い部活とかでそれなりに忙しいのが分かってたし、受験の時は他人のことを気にしていられる余裕がわたしにはなかった。お母さんと修ちゃんのおばさんが電話で話して、ようやく同じ大学だって分かったくらいなのだから、きっと修ちゃんも同じだったんだろう。学部こそ同じだけど、学科は違う。学内でも、たまたまクラス分けが同じになった必修の英語のクラスで週に一度見かけるだけだ。修ちゃんは変わらず明るい性格で、いつも友達に囲まれているけれど、私は同じ高校から大学でも同じ学科に進学した友達と二人でいるから、話しかけようもなかった。その友達――みっちゃんが、「あの人かっこいいよねぇ」なんて言ってきたときは、まさかはとこだなんて言い出せなくて、「そ、そうだね」ってキョドった返答しか出来なかったのだ。……いくら親友といえど、現時点でみっちゃんにこんなてんこ盛りな報告、冷静にできる自信なんてない。

「璃子、沈んじゃうくらいなら部屋戻ってなさい。せっかくこれから夕飯作るんだから、不味くなっちゃかなわないわ」

 そこまで考えて思わずはぁ、とため息をつくと、お母さんが痛烈なパンチを効かせてきた。うーん、娘といえどそういうとこは容赦しないんだよね、この人。しぶしぶ私は立ち上がって、冷房の効いたダイニングから生ぬるい空気の廊下に出て、重い足取りで階段を上ったのだった。
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