今日もそれは鳴らない。


"麻里"そう静に私の名前を口にする。

「こっちにちょうだい」

言葉と共にゆっくりと、もう片方の手を私へと差し出す。物腰は柔らかいのに、そこにはやっぱりどこか有無を言わせないものがあった。

「...いや」

「麻里」

「...いやなの」

「......」

ひたすらに拒む私に、彼はため息を溢した。


「...良い子だから、返して」



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