今日もそれは鳴らない。
「わからないよ、貴方がわからない。だけど、貴方だって、私のこと....何も知らないじゃない」
そう言えば、彼は眉を寄せて私を見る。
「...貴方がこの時計を愛しそうに見つめる度、私が泣き叫びたい気持ちになること。顔も知らない誰かの存在に、いつも怯えてたこと。貴方に愛されたいって、ずっと願ってたこと。」
ヒステリックに鳴り響いていた声は、いつの間にか弱々しくなっていて、それは涙声に変わった。
"知らなかったでしょ?"と笑ってみせれば、彼は何とも言えない表情で"ごめん"と小さく呟く。