ただ、今



そうかすれた声で
わたしに言った。

ただ泣きながら
抱き締め返す事しか

出来なかった。

「ばか。当たり前じゃん。ひろちゃん、おかえり。」
『うん。ただいま。』




ねえ、ひろちゃん。
ただいまってゆったじゃん。

離れないでって
わたしにゆったじゃん。

どうして手を
話してしまったんだろう。
ひろちゃんの事
何一つ忘れないって
決めていたのに
今じゃあひろちゃんの事
思い出す事が
少なすぎて
どんどん淋しくなる。

また淋しいって
わたしにはもう
言ってはくれないね。
< 57 / 79 >

この作品をシェア

pagetop