「先生、それは愛だと思います。」完

「ここに、私の言葉が響くことは、これからも無いんですかっ……」
とんでもなく声が震えているし、自分でも何が言いたいのか全く整理がついていない。
でも、先生の心に、私の言葉が全然届いていないことが、哀しくて悔しくて仕方ないんだよ。

そりゃ、確かに私は先生のことを知らなさすぎた。
心美ちゃんのことも、家族のことも、恋愛観のことも、……美里さんのことも。

でも私は、過去の先生を好きになったわけじゃないんだよ。
今の先生を好きになったんだよ。

どうしてそれを、信じてもらえないの。こんなに悔しいことが、他にあるの。
悔しくてたまらなくて、私はもうすでに、先生の前で自分を見失っていた。そんな私を見て、先生はため息交じりに口火を切った。

「文ちゃん、どっちにしろ、そんなに辛いならもうやめよう」
「そうやって逃げるんですか、いつも」
「逃げてないよ、結果論で言ってるんだ」
「そうやって先生は、傷つけることから逃げてるんですよっ……」
「俺はこれ以上文ちゃんを傷つけたくないんだっ」
「傷つけていいんですってば!!」

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