「先生、それは愛だと思います。」完
怒りが頂点に達して、私は今までにないくらい大声を上げてしまった。
高橋先生はぽかんとした顔で私を見つめて、言葉を失っている。
ついに、大粒の涙が頬を伝って、ボロボロと溢れだしてしまった。
「傷つけて……ください……先生……」
何を言っているんだろう。バカだな。自分で自分に呆れてるよ。でもきっと、これが私の一番の本音だったんだ。
私はソファーに膝立ちして、先生をのことを見下ろした。
「傷つけられるくらい、そばに来てください、先生……っ」
ぼたぼたと流れ落ちた涙が、先生のシャツに染みを作る。先生は瞳を揺らして、私のことを黙って見つめている。
「先生は、バカだなって、思うでしょうけど、きっと恋って、傷ついて、修復して、厚さを増していくものなんだと思うんです……。だって、かさぶたが多ければ多い程、次はそこを傷めないようにしようって、分かるから……っ」
確かに私は今、先生の心のどこにかさぶたがあるのか知らない。分からない。でもそれは、過去のことだから。
過去のことも全て含めて好きだよって言えたらきっと格好良かったんだろうけど、でも、私は〝今〟の先生が全力で好きだよ。
それじゃだめなんですか?
「先生、私、先生が好きだよっ……」
「文ちゃん……」
「でも、やっぱりもうただの気まぐれで付き合うのは辛いから、ちゃんと私を見て欲しいっ……」
その先の言葉を言おうとしたけれど、切な過ぎて、すぐに声にならなかった。
だけど、私は先生の瞳を見つめて、震えた声でひと言付け足した。
「さ、最初は、美里さんの代わりでも、い、いいからっ……」