「先生、それは愛だと思います。」完
そう言った瞬間、ぐるっと視界が反転して、気づいたら先生にキスをされていた。
この前とは違う、息もできないくらい激しいキスに、理性の保ち方を忘れてしまった。
それは先生も同じな様で、全く余裕の無い表情で、私の唇を奪った。
ようやく唇が離れて、呼吸を整えると、高橋先生は今にも泣きそうな顔で私の瞳を見つめ、私の頬を優しく撫でた。
「代わりじゃないよ」
先生の指が、私の頬を滑って、涙で濡れた目尻で止まった。
先生の声は、声にならないほど擦り切れていた。
「代わりじゃない……」
あまりにも優しい声で何度もそう言い聞かせるものだから、私の涙はまたぽろぽろと溢れ出てしまった。
そんな私の涙を、先生は指で拭った。
「……文ちゃんが他の男とキスをしているのは、正直本気で面白くない」
いつも無表情の先生の顔が、苦しそうに歪んでいるのを見て、胸がぎゅっと苦しくなった。
「……文ちゃんに泣かれるのは、心が裂けそうなほどしんどい」
ぽつぽつと語りだす先生の頬に、私はゆっくりと手を重ねた。
「……文ちゃんに好きだよって言われるのは、死ぬほど嬉しい……って、やっと気づいた、今」
遅いよな、って、先生が少しだけ笑った。
なんだかその脆い笑顔を見たら、胸の中がぎゅっと苦しくなって、呼吸がうまくできなくなった。
だから私は、先生の首に腕を回して、思い切り彼を抱きしめた。
それから、少し自惚れかもしれない言葉を、泣きながら言った。
「先生、それは愛だと思いますっ……」