「先生、それは愛だと思います。」完
「俺が描いた原稿に、タオルをかけてくれた時、本能的にことりを俺のものにしたいって思った。だからキスをしようとした」
抑揚のない声で、淡々と語る彼だったけれど、わずかに震えている手を見て、それはただ緊張を必死に隠しているだけだと気づいた。
「受験が終わるまで待ってたらもう遅いんだろ?」
祥太郎君は、私をゆっくり話して、肩を掴みながら真剣な表情で私を見つめた。
視線が真っ直ぐすぎて、本気過ぎて、目が、離せなかった。
祥太郎君はそんな私を見つめたまま、薄い唇をゆっくり開き、衝撃的なひと言を言ってのけた。
「俺、知ってるよ。ことりが誰を好きなのか」
そのひと言に、頭の中は一瞬真っ白になった。
そんな私に追い打ちをかけるように、彼は更に言葉を続けた。
「高橋誠でしょ、俺のクラスの担任の」
どうして祥太郎君が知っているの?
否定もせずに、ただただ驚いている私を見て、祥太郎君は一度視線を床に落とした。
「この前、ことりが〝心美〟に連絡を取っている時、アイコンの顔写真が見えたんだ」
「心美ちゃんを知ってるの……?」
「知ってるよ。俺が転校する前の学校で、いじめられてたから、良く覚えてる。名前を聞いたときまさかとは思ったけど、こんな偶然あるんだな」
祥太郎君は感心し切ったように吐き捨ててから嘲笑した。彼の言葉を聞けば聞くほど私の心臓はドクドクと鼓動を速めていく。