「先生、それは愛だと思います。」完
愛おしい。高橋先生の口からそんな言葉が出てくるなんて夢にも思わなくて、私は顔を赤くしてしまった。
先生の前でこんなにあからさまに赤面をしてしまうことは初めてだったので、慌てて俯いたが、先生はそんな私の赤面した様子をばっちり見ていた。
「……自分の言葉でそんな風に女の子が顔赤くするの、人生で初めて見たわ」
感心したように先生が呟くので、私は先生の膝を足で蹴った。
「照れ隠しが暴力とはどういうことだ」
「すみませんつい……」
両手で顔を覆いながら謝ると、ふと隣に気配を感じた。そろりと指の隙間から覗くと、先生がいつの間にか隣に移動していた。
「近い! パーソナルスペースが無い!」
「生徒との心の距離はこうやって詰めないとね」
「物理的に距離詰めてるっ」
「ほらいいから、勉強するよ」
顔を覆っていた手を無理矢理離されて、シャーペンを握らされた。
私は、仕方なく顔を赤くしたまま参考書を開くが、先生はボソッとしょうもないことを呟いた
。
「……なんか、下心ある家庭教師の気持ちが今なら少しわかるわ」
「変なこと言わないでくださいまじで」
「変な気持ちになったらごめんね」
「いやそんな綺麗な瞳で謝られても」
冷静にツッコミを入れると、先生はくっと喉を鳴らして笑った。それを見て、私もつられて笑ってしまった。