「先生、それは愛だと思います。」完

「……そんな曖昧な言葉じゃ、足りないです」
「……煽るの上手だね、ほんとに」
「そうやって、流すんですね……」
寂しげに呟くと、先生は私の背中に腕を回して、キスをした。
肩甲骨付近を服の上から大きな手で優しく撫でられて、背筋がゾクゾクした。
先生の唇は、柔らかくて熱い。
もう何度もキスをしているはずなのに、いまだにこの浸食されていく感覚に慣れることができない。
「先生……」
先生は、私をどう思ってる?
やっぱりまだ、興味がある程度?
少しは可愛いと思ってくれている?
どれくらい特別な位置にいるの?

聞きたいことは、山ほどあるよ。
だって私は、先生のことが好きだから。

「……それは愛だと思いますって、文ちゃんが言ったんだ」
唇を一瞬だけ離して、先生が囁いた。
呼吸が乱れている私とは正反対に、先生はひとつも呼吸を乱していない。
「本当の愛っていうのは、ものさしが分からないけど、でも俺は、文ちゃんが欲しい」
そう言って、又すぐに先生は唇を重ねてきた。
苦しくて、軽く胸を押し返すと、先生は私の手を取って、私の指先にキスをした。
それをぼうっと見つめていると、私の瞳を真っ直ぐ見つめ返して、先生は囁いた。

「……好きだよ、ことり」

――言葉って、不思議だ。
たった四文字なのに、キスだってもう何回もしているのに、今まで先生にされたどんなことよりも幸せで嬉しかった。
思わず泣きそうになってしまって、先生の胸に顔を押し当てると、先生は優しく私の頭を撫でてくれた。
それから、また優しい声で囁くんだ。
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