「先生、それは愛だと思います。」完
「ことりただいまー!」
夜の二十時、疲れ切った様子の母が帰ってきた。
私の家は母子家庭なので、朝ご飯とお弁当は母で、夕飯は私が作る担当になっている。
駅から少し離れた小さなアパートで、母と二人暮らしをしてもう十年が過ぎた。
父は私が八歳の時に病死した。
母はそれまで専業主婦だったけれど、父の死をきっかけに仕事を掛け持ちして私を育ててくれた。
私もなるべく自分のものは自分のお金で買うために、アルバイトを始めた。
「今日は肉じゃがとコロッケとポテトサラダだよ~」
「どんだけ芋なの! 炭水化物フルコースじゃん」
「仕方ないじゃん、お母さんが特売で買いすぎたじゃがいも消費しなきゃいけないんだから」
そう言うと、母は少しバツが悪そうな顔をして、ぺろっと舌を出した。特売で買い込みすぎるのは母の悪い癖だ。
「できたよ、食べよう、お母さん」
「わーい、ことりの作る肉じゃが大好きー!」
母はスーツの上着を脱いで着席した。テーブルの上に出来上がった料理を並べて、私も着席する。そして、両手を合わせて、いただきますと呟いた。
「美味しい、ことりの料理本当最高!」
「お母さんソース口についてるよ」
「疲れとれるわ~」