「先生、それは愛だと思います。」完

文ちゃんとちゃんと付き合うためには、もっと色々話し合わないといけない。
心美や楠に言われたことも、美里のことも、そして俺の恋愛に対する考えや、家族観も……。

でも、まだ十代である彼女に、どこまでどう説明したらよいのか、皆目見当がつかない。

そんな風にぐだぐだ考えながら、自宅の最寄駅で買い物をして、DVDを借りてぷらぷらしていると、あっという間に予備校が終わる時間が近づいていた。
俺は以前教えてもらった予備校の地図を見ながら、予備校近くのコンビニで文ちゃんを待つことにした。

コンビニで買ったコーヒーを飲みながら、自分の吐息が白いことに気づき、ふと空を見上げた。
もうすぐ十二月に入り、今年が終わろうとしている。
文ちゃんに無責任な発言をしてから、もうずいぶん時間が経った。
文ちゃんがする行動すべてが危なっかしくて放っておけなくて、目が離せなくて、気づいたら自分の中の色んな壁をぶっ壊されていた。

俺は文ちゃんに、目には見えない沢山のものをもらっているんだと思う。
だから、彼女になにか返してあげたいと思うし(でもそれは勉強を教えるくらいしかないのだが)、彼女を傷つけたくないと思う。

そう思う反面、手離したくないという気持ちが加速してしまうのも、また事実なのだが。

丁度コーヒーを半分まで飲み終えた頃、遠くから文ちゃんの声が聞こえた。
予備校方面の暗い道を眺めて彼女が近づいてくるのを待っていると、もう一人男子と一緒に歩いていることに気付いた。

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