「先生、それは愛だと思います。」完
「触んなよ、普通にムカつくから」
――本当、かわいそうだ。
意外と嫉妬深いこんな男に、好かれてしまって。
「え、高橋先生……、なんで」
文ちゃんは目を丸くして俺を見ていたが、祥太郎君はこいつ死ねよ、という目つきで俺を睨んでいた。
俺は言葉より先に、文ちゃんの手に触れていた彼の手を掴んでいたが、すぐに祥太郎君は、俺の手を振り払った。
「大人のくせに、案外余裕ないんだな」
「俺、人生で余裕あった時期なんて一度もないよ」
「ていうかやっぱりそういう関係なんだな、文月と」
その言葉を聞いて、文ちゃんは顔面蒼白になっていたから、俺は一切動揺せずに返した。
「そう、超仲良しだから、邪魔しないでね」
「先生っ!」
今度は文ちゃんにこいつ死ねよ、という目つきで睨まれた。
「別にばらしてもいいよ。俺、どうせ転職考えてたし」
「わかった、明日学校に高橋はロリコン教師って張り紙配ってまわるわ」
「その場合相手が文ちゃんということも芋づる形式でバレて、文ちゃんの進路にも関わるけどな」
「……クソ教師だな、お前」
祥太郎君は、軽蔑しきった瞳で俺を睨み、そう吐き捨てた。
「俺のことはどうでもいいけど、文ちゃんに被害及ぶことしたら許さないよ」
「お前自体がすでに文月にとって害なんだよ」
「うわー、今のはキタわ」
無表情のまま心臓を押さえてそう返すと、それが余計彼の癇に障ったようで、目で死ね、と言われた。