「先生、それは愛だと思います。」完
「もういいよっ、帰ろうよ先生」
ピリついた空気に耐えられなくなった文ちゃんが、俺の腕を引っ張った。
目的は文ちゃんを迎えに来ること、それだけだったから、俺は文ちゃんのいうことに素直に従った。
すると、去り際に、まるで背中を引っ掻くように、鋭い言葉を祥太郎君が浴びせてきた。
「姉ちゃんみたいに文月のこと傷つけたら、俺お前のこと探し出して殺すからな、本気で」
文ちゃんはその言葉を聞いて、彼のことを怒ろうとしたけれど、俺はその口を手で塞いだ。
「その時は、俺からお前に会いに行くよ」
そう返すと、もうそれ以上後ろから言葉が返ってくることは、無かった。
まさか自分の中にこんな醜い感情があるなんて、知らなかった。
彼女が他の異性に触られてこんなに嫉妬心で燃え上がったことなんて、今までなかった。
つくづく彼女には、俺には今までなかった感情を、ぶっ壊して掘り起こされる。
マンションに着きリビングに入ると、俺はすぐに文ちゃんを後ろから抱きしめた。
「た、高橋先生、どうしたんですかっ……」
「文ちゃんに、話さなきゃいけないことがある」
「な、なんですか……それは」