「先生、それは愛だと思います。」完

文ちゃん、ここまで言っても君がまだ俺の手を取るなら、もう俺は構わず君を縛るよ。
そのことを、文ちゃんはちゃんと覚悟できる？
今という時間を、未来を、俺に預けることができる？

「……高橋先生は、ずるいね。いつもそうやって、私がNOと言えば終わる展開を、仕掛けてくるよね」
文ちゃんは、俺の手をするりと解いて、くるっと俺の方を向き返った。

「そうやって、自分の汚いところ曝け出して、これはどう？ 耐えられるの？ って、まるでテストみたいにっ」
「違う、そんなつもりじゃない」
「私が傷つかないために？ 何それ、善人ぶってるんですか？ それとも大人として正しい判断を、ってやつですか？」
「……文ちゃん、それ本気で言ってるの？」
「じゃあどの項目をクリアしたらOKなんですかっ、私は一体、どの先生を受け止められれば彼女としてクリアできるんですかっ」
「ゲームみたいに言うなよっ」

感情的な文ちゃんに釣られてはいけないと分かっていても、俺は少し頭に血が昇ってしまった。珍しく大声を出してしまった俺に、文ちゃんは驚いていた。
違う、そういう意味じゃない。俺は君を傷つけたくないから、後悔させたくないから、こんなに慎重になっているんだ。
こんなに慎重にならざるを得ないほど、君に真剣なんだよ。

でも、この気持ちをどう伝えたらいいのか分からない。
こんな気持ちになったことが無いから、伝え方が分からない。