「先生、それは愛だと思います。」完
まるで犬の様に素直に擦り寄ってきた文ちゃんに、俺は自分ができる精一杯優しいキスをした。
そうしたら、もっと文ちゃんに触りたい欲に駆られたけれど、なんとかキスだけに止めようと必死に堪えた。
きっと彼女は、俺のそんな葛藤なんかには、ちっとも気づいていないのだろうけど。
「好きだよ、文ちゃん」
とても言葉で表すだけでは足りない。
だけど、文ちゃんのことが本当に大切だから、俺は何度も何度も文ちゃんにもっと触りたい欲を殺した。
いつか彼女に触れていい時が来るまで、彼女に呆れられないように頑張らなくては。
まるで壊れ物を抱きしめるように、文ちゃんを抱きしめた。
そうしたら、ずっと心のどこかを支配していたあの言葉が、少しずつ溶けだしていくのを感じた。
〝あなたは結局、一生ひとりなんだわ〟。
……美里、俺は少し、変わることができたかな。
誰にも無関心でいた俺が、今こんなにもひとりの人に依存している。
ましてや、この人の為に自分の時間をあげていいとさえ、思っているよ。
今までずっと、愛する感情が分からないと言っていたけど、当たり前だ。
だって、ひとりでいたら、分かるはずがない。
この体温の優しさを知らなかったら、分かるはずがない。