「先生、それは愛だと思います。」完
冷たい彼が好き *楠side
浮気がバレて離婚した父を見て、正直心の底から気持ち悪いと思った。
毎朝父は母に「愛してる」って言ってた。
父の浮気を知った瞬間、あの言葉が、この世で一番汚らわしい言葉に思えて、この世で一番信じてはいけない言葉だと悟った。
父だけでなく、あんなに安っぽい言葉にほいほい騙されて安心しきっていた母も母だ。
本当に気持ちが悪い。
なぜか私の家系は離婚が多く、母の妹や親戚のおばさんも、静かに結婚生活を終えていた。
この世に、百%純真な気持ちで、「愛している」なんて言葉を囁く人が何人いる?
「あんな奴のどこがいいんだよ」
リビングのソファーで、高橋先生の(隠し撮りした)写真を眺めていると、キョウダイとなった祥太郎が、嫌悪感丸出しの声で言い放った。
祥太郎は冷蔵庫から牛乳を取りだし、それをラッパ飲みしたので、私も分かりやすく嫌悪感を顔に出した。
「姉ちゃんも文月もお前も、メンクイなんだな」
「高橋先生の魅力は顔だけみたいに言わないでよ」
「顔だけだろ、何度姉ちゃんのこと泣かせたと思ってんだ、そいつが」