「先生、それは愛だと思います。」完
祥太郎は牛乳をそのまま飲み干して、容器をべこっとへこませてからゴミ箱に投げ入れた。
美里さんがどんなに高橋先生にふりまわされていたのか、祥太郎がそんな姉を見てどんなに辛い思いをしたのか、私は知らない。知ったこっちゃない。だってそんな事情と私の恋愛は全く関係ないもの。
「……お前ってさ、中々性格歪んでるよな」
「あんたもね」
「姉ちゃんが心配してたぞ」
「どうせ元彼が気になってるだけでしょ」
つんとした声で言い張ると、祥太郎はじっと私のことを睨んでから、ひとつ溜息を吐いて二階へ上がって行った。
私はそんな彼に追い打ちをかける様に言い放った。
「はやく文月さんと付き合ってよね! ちゃっちゃと奪ってよ!」
殆ど八つ当たりの言葉に、彼は一言も返さなかった。
同居を始めてからまだ二週間しか経っていないのに、私のストレス係数はとんでもなく上昇していた。
「ただいま。あれ、まだ麻衣ちゃんしか帰ってきてなかったのね」
「……祥太郎が上にいますよ」