「先生、それは愛だと思います。」完

* * *


私が高橋先生を好きな理由は、彼は人を簡単に好きにならないからだ。

異動してきた最初は単に顔がタイプだった。授業を受けてみると、声や話し方もタイプだと分かった。
女生徒にどんなに色目を使われても、全く関心を示さない冷たい態度に、ますます興味がわいた。

今までの若い男性教諭は、手を出すつもりはなくとも、可愛い子に話しかけられたりすると、顔にその下心が出ていた。

私は父の浮気もあって、人一倍そういった表情に敏感になっていた。
だから、下心を見せないどころが、むしろ女の子からの色目に対して冷え切った瞳で対応しているのを見て、良い意味で背筋がゾクゾクした。

そして思ったのだ。
この人は、私と同じだ。私と同じ、人を簡単には愛せない人だ。そうに違いない。
本当に女子に対するそういった下心が無いのかを確認する為に、何度も自分から絡んでは彼のことを探った。けど、彼は一度もボロを出さなかたった。
そして、確信はますます強まった。

高橋先生のような冷たい人なら、逆に信頼できる。こういう人に愛されてみたい。
心からそう思ったのだ。
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