「先生、それは愛だと思います。」完
そんな高橋先生に特別視されている女って、どんな人なんだろう。

文月ことり、東海林高校に通う三年生で、母子家庭、現在祥太郎と同じ予備校に通っている。
祥太郎から無理矢理聞きだした彼女のプロフィール。どんな性格をしているのかは、よく知らない。
美里さんの様に、偽善の塊? 菩薩みたいな心を持った人? 綺麗ごとばっかりで中身スッカスカの人間?

『高橋先生……?』
頭の中に浮かぶのは、財布だけ持ってポカンとした顔で突っ立っていた彼女の顔。
コンビニの帰りに偶然出くわしたので、先生の腕に引っ付いて牽制したが、彼女は終始口をあんぐり開けたままだった。

特別可愛いわけでも綺麗なわけでもない。
賢そうな雰囲気もなければ、育ちの良さも感じられない。
どこにでもいる平凡な女子高生だった。

こんな人が一体、どうやって高橋先生の心を動かしたのだろうか。
どうやったら彼女に勝つことができるのだろうか。

一度話してみたい……会って話して、先生のことを聞きだしてやりたい。
出方によっては脅してやってもいい。先生との関係をばらしてやるって。
それで先生が首になろうと私の知ったことじゃない。だって私は、高橋先生が好きなのではなく、高橋誠が好きなのだから。

「あら、麻衣どこかでかけるの?」
「祥太郎が塾のテキスト忘れたみたい。届けに行く」
「そうなの。仲良いわね、気をつけて」
「はーい、行ってきます」
< 151 / 208 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop