「先生、それは愛だと思います。」完
顔に気まずいって思い切り書いてあるわよ、文月ことり。
品定めするように彼女の一挙手一投足を観察していると、彼女の顔はどんどん強張っていった。
だから私は、単刀直入に聞いてやった。
「高橋先生と付き合っているんでしょう?」
「えっ……」
彼女は目を丸く見開いて、激しく動揺していた。
「ごめんね、祥太郎から聞いちゃったの」
嘘だけど。
「すごいね、どんな手を使ったの?」
「いや、あれは祥太郎の誤解でしてっ……」
「嘘つかなくていいよ、私の質問に答えて?」
心の中で睨みながら笑顔を作ると、文月は少し脅えたような表情で私を見つめた。
……なんなの、その顔、気に食わない。
私が怖いの? 逃げ出したいの? そんなこと絶対にさせない。
問い詰めて追いつめて別れさせてやる。
文月の震えた瞳を見て、嗜虐心に火がついてしまった。
「私、高橋先生が好きなの。文月さんと同じように。だから付き合ってると聞いたときは凄くショックだった」
「そう……だったんですか」
「でもね、今はあなたのことを心配しているの。だって先生、今まで自分の無関心さが原因で、沢山彼女を泣かしてきたらしいの」
もちろんあなたも例外じゃないのよ、先生が本気であなたに興味があるわけないじゃない。
だって先生は私と同じ仲間だもの。人を簡単には愛せない、冷めた人間だもの。
「きっと先生と付き合っていたら、傷つくことがこの先ー……」
「傷ついていいんです」
「……は?」