「先生、それは愛だと思います。」完
文月が、高橋先生はまだ自分に思いが無い、と思っていることを、私は意外に感じた。
だってさっきまでの言動で、そんなそぶりは見せなかったから。
「生徒と教師なんて……リスクが多すぎる、上手くいくわけない。親だってなんて言うか分からない。この関係がもしバレたら……そう考えると、先生との恋より自分の進路がどうなるかが不安で仕方ないですよ」
これがこいつの本音?
ほらね、やっぱり、善人ぶってても、結局は自分が一番かわいいんじゃない。
「正直怖いことばっかりです……、でも、それでも先生のそばにいたいっ……、私はまだ子どもだから、結局は感情論でしか行動できない。何を言っても綺麗ごとになるっ」
「感情だけで行動してたら後悔するわよっ、バカな女ね」
「後悔したっていいっ、それが先生と過ごした、証になるなら……っ」
「なっ……」
「それをあなたにとやかく言われる筋合いはないっ」
――私は、高橋先生が好きだ。
この子以上に彼を理解できるし、色んな苦しみを共有できる。
高橋先生のような冷たい人なら、逆に信頼できる。
こういう人に、愛されてみたい。
心からそう思ったのだ。
ただただこの人に愛されたいという、『感情』だけに突き動かされて。
『さっきあなたが言った言葉は、あなたにもそのままお返しできます』