「先生、それは愛だと思います。」完
「ただ好きなだけなのに……」
文月の弱々しい言葉が、いつまでもいつまでも耳に残った。
それは自分の気持ちとも、重ねられる言葉だったからだ。
なんだかそのひと言を聞いて、とてもやるせない気持ちになり、そしてそれは彼女も同じなのだと思うと、自分のしようとしている行動がとても愚かに思えてきた。
私は、バラしてやる、という言葉に込めた怒りを、ぐっと胸の中で鎮火し、撤回した。
そして思った。途方もない、答えのない言葉が頭に浮かんだ。
好きは、なんて苦しいものなんだろう。