「先生、それは愛だと思います。」完

勉強、勉強をするのだ、私。
麻衣さんとのことは一切先生に言わずに、全ては後回しにして。
最優先すべきことは、受験勉強だ。

「ことり、お夜食作ったけどいるー?」
「お母さん……ありがとう」
「あんまり根詰め過ぎないようにね」
「あはは、あと三か月ちょっとで終わるから安心して」

センター試験が始まるまであと僅か。国立の試験日まではまだ少し時間があるけれど、模試の成績を見るとあまり安心はできない。
暗記ものを一時間集中して行い、残った時間は全て過去問と得意科目に使う。
理系科目で分からない問題は、先生にスカイプで教えてもらった。
五年分の過去問を何周もして、ただただ机にへばりついて問題を解く。その時だけは、色んなことを考えずに済んだ。
だけど、少し休憩を挟んだ瞬間、ここ数週間の嵐のような出来事が脳裏を駆け巡り、酷い時は頭痛がした。

先生を好きになってから、心がぐらぐらぐらぐらする。
先生を好きな気持ちは変わらないのに、増していく一方なのに、気が休まる時が無い。

私は覚悟しているし、認めている。
先生に高校生活最後の時間を捧げることも、自分の非力さも。
私は、いざなにか起きたとしても、麻衣さんがこのことをバラしたとしても、子供だからなにもできない。

せめて、私が卒業するまでの数か月は、持ちこたえて欲しかった。
卒業すれば、ビクビクせずに先生と付き合えるし、私の心にももっと余裕があっただろう。
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