「先生、それは愛だと思います。」完

『ひな鳥みたいにちっちゃくてふわふわしてて、守ってあげたくなる。この子のことを、いつまでも甲斐甲斐しく心配して、守ってあげたいと思ってくれる人と出会えますように。父さんはそう願ってつけたのよ』
『ことりっていう名前が、この子のお守りになりますように、守ってくれる人と出会えますようにって……』
『だからねことり、あなたの名前は父さんがくれたお守りなんだよ。母さんも、あなたの名前を呼ぶたびに、あなたを守らなきゃって思うわ』
『ことりが大切な人に出会うまでは、母さんがしっかり守ってあげるからね』

……お母さん、私は、あの時私の手をしっかり握ってくれたお母さんの手の温度を今も忘れていないよ。
あったかくて、大きくて、優しくて、すごく安心したんだ。
お父さんがいなくても、いじめにあっても、お母さんがいれば大丈夫って、心からそう思えた。

いつか大人になったら、私がお母さんのことを守ってあげる。
あの時そう約束したのに。


「約束、守らせてよっ……、お母さん……っ」


私の名前を優しく呼ぶお母さんの声が、頭の中に響き続けた。




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