「先生、それは愛だと思います。」完
……あの時の自分を、殴ってやりたい。
もう後戻りできないくらい、こんなに深いところまで踏み込んでしまった。
まさかこんなことになるなんて、こんなに文ちゃんが自分にとって大きな存在になってしまうなんて、思ってもみなかった。
確かに最初は、美里に雰囲気が似ているから気になっていた。
実際に話してみたら、表情がコロコロ変わって、なんだかほっとけなくて、面白い子だなって思った。
告白されたことは素直に嬉しくて、もっと文ちゃんと話してみたいと思ってしまった。
軽率に提案してしまった関係で、こんなに優しい子の未来を摘んでしまうことになるかもしれない。
俺は、文ちゃんには、温かい家庭を築いてほしいし、いいお母さんにもなって欲しい。
親をいつまでも大事にして、あの太陽みたいな笑顔でい続けていてほしいと願うよ。心から。
それは、嘘なんかじゃないよ。強がりでもない。
本当に君が大事だから、心の底から幸せになって欲しいと願っているよ。
「……俺は、文ちゃんが幸せになるためなら、なんだって協力するよ」
「高橋先生……?」
「……君を、世界一幸せにしてあげたいと、心の底から思う……」
「先生、なにかあったんで……」
「文ちゃんが泣いていたら一晩中背中をさすってあげたいし、文ちゃんを傷つけるあらゆるものから守ってあげたいと思う」
「先生、なんでそんな泣きそうな顔するの……?」
「ことり、だから、絶対幸せに……」
絶対に幸せになって。
幸せにすると言えない自分が悔しくて、悔しすぎて、言葉に詰まった。
文ちゃんは、震えている俺の手を握って、不安そうに俺の顔を見つめている。