「先生、それは愛だと思います。」完
宣戦布告の××
『文ちゃんみたいな子、一回攻略してみたいんだよね』
昨日の台詞を思い出しては、机に頭を打ち付けるという行為を繰り返し、本日すでに百回目を突破した。
「文ちゃん先輩ー、おでこ赤くなっちゃってますよ」
季節は4月上旬で、部活の勧誘が活発な時期だ。
私が所属する手芸部は本当に地味な部活なんだけど、毎年作品展に提出したり、老人ホームへ訪問しておばあちゃんたちと一緒に作品をつくったりしている。
それなりにちゃんと活動してきた部活なので、意外と引き継ぐことも多く、部長として五月までは残ることにした。
私達は、放送部の隣の、小さな教室を使って細々と活動している。
棚にはカラフルな毛糸が所狭しと置いてあり、ボタンなどの装飾品もかなり充実している。
長方形の安っぽいテーブルに裁縫道具を広げ、これまた安っぽい丸テーブルに座って黙々とお裁縫や編み物をする。
私はそのテーブルに、ひたすら額を打ち付けていた。
そんな私を、後輩たち四人が不安そうな顔で見ている。
因みに私の代に同い年の子はいない。
「文ちゃん先輩、本当にどうしたんですか?」
「ちょっと思い出したくないことを忘れたくて……」
「記憶消そうとしてたんですか!?」