「先生、それは愛だと思います。」完
「お前も社会人になったらいい男見つけろよ」
「残念ながら、職場は女性が七割です……」
「本当しょうもない男ばっか引き寄せるよなー、お前って。まあ二年生の時に付き合ったあのマザコンとは別れて正解だったけど」
「あれは祥太郎君が別れさせたようなものだったよね……」
「あいつは認めん」
「なぜ祥太郎君の許可が必要なのか……」
ハハ、と苦笑いをしたが、祥太郎君は、当然だろ、と一言呟いてから、食券をもって席を立った。
何がどうなって当然なのか教えてほしい。
「ことりの分も貰ってくるから、このまま席取っておいて」
「はーい」
私は、ピンと指をまっすぐにして手を額に当て、了解のポーズをとった。
祥太郎君は、相変わらず口が悪いけれど世話好きで、ぶっきらぼうな優しさを持っている。
なんだかそういうところは、あの人に似ているなあと思ってしまう。
そんな風に感じながら祥太郎君のことを見送ったが、彼はくるっと一回転してなぜか私の席に戻ってきた。
「……ことり、お前、社会人になる前に会ってこなくていいのかよ」
「え……誰に」
「俺は、お前にちゃんとふられてからは、お前とこうやって飯食えるだけでいいと思ってたけど、社会人になったら、もうこうやって会うこともできなくなるんだ」
「祥太郎君……?」
「会ってほしくないけど、会ってほしいよ。……社会人になったら、どんどん優先しなきゃいけないことが変わっていくし、増えていく。そのまま押し流されて、いつか本当にただの思い出になってしまうかもしれない」
「いや、だってもうとっくに思い出だし……」
「思い出になったらそれはもう、会う意思はないってことだよ、ことり」