「先生、それは愛だと思います。」完
どうして先生の口車にまんまと乗せられてしまったのだろう。
昨日の自分の言葉を思い出すと、顔から火が出そうになる。
「記憶消すのは別にどうでもいいんですけど、新入生が来たら変な先輩がいると思われるんでやめて下さいね」
「鴫(シギ)ちゃんって意外と鋭いこと言うよね」
「あ、噂すれば新入生!」
鴫ちゃんは私の背後にある扉を指差し、慌てた様子で席を立った。
私もそちらに視線を向けると、そろりとドアが開いた。
「あの、入りたいんですけど、ここに」
――そこには、まるでフランス人形のような見た目の、美少女がいた。
水色チェックのセーラー服という、コスプレチックな制服を見事に着こなした、完璧なアニメ顔だ。
ふわふわとした髪の毛をツインテールにして、ガラス玉のように美しい瞳を、私達に向けている。
そのあまりの美しさに恍惚としてしまい、私達は言葉を失った。
「あの、駄目なんですか?」
「とんでもない! 大歓迎だよ! 編み物好きなの?」
「いえ、一番楽そうだったので希望しました。この学校、部活入らないといけない校風なんですよね?」
口角を一ミリも上げずに、淡々と冷たい口調で話す彼女に、私達はまた言葉を失った。
普通だったら腹が立つところだけど、そんな感情を吹っ飛ばしてしまうほど彼女は美しかった。
私は丸椅子を彼女の足元に置いて、座るように促した。彼女はちょこんとそこに座った。