「先生、それは愛だと思います。」完
「な、なんか透明のガラスケースに入れて展示してしまいたい……」
「文ちゃん先輩、怪しい発言やめてくださいっ」
「はっ、ごめんね、ところで名前はなんて言うのかな?」
慌てて正気になり質問をすると、彼女はテーブルの一点を見つめながら、薄くて小さな口を開いた。
「高橋 心美(タカハシ ココミ)です」
高橋、という名字に、私は思わず過剰に反応してしまった。
そんな私を見て何かを感じ取ったのか、心美ちゃんは大きな瞳を私に向ける。
「似てますか?」
「え、何に?」
「高橋誠に。私、妹なんですよね」
「えー―!?」
その言葉に、部員全員が驚き立ちあがった。
確かにこの世間離れした美しさは、どことなく高橋先生と似ているような。
「高橋先生元気!? 先生が異動しちゃってから本当に女子のテンション下がっちゃっててね」
「会いたいなー。家での高橋先生ってどんななの?」
後輩たちは興奮気味に、口々に心美ちゃんを質問攻めする。
彼女は、くるんと上を向いた長い睫毛を伏せて、一つ大きなため息をついた。
「兄は一人暮らしなので知りません」
「あ、そ、そうなんだ……。なんか、兄妹仲悪いの……?」
「はあ?」