「先生、それは愛だと思います。」完

高校の時から私と先生の恋愛は秘密の恋愛だったから、こうして堂々と一緒にいられること私は本当に嬉しく思っている。
高校の時の友人に結婚を報告したところ、質問と祝福の嵐だったりと、大変なこともあったけれど。
……そういえば先日、心美ちゃんと祥太郎君、それから美里さんと麻衣さんからも祝福の言葉をもらった。
心美ちゃんはつんけんした言葉でのメッセージだったけど、本当は祝ってくれていることが伝わってくる言葉だった。
祥太郎君は今休暇を利用して、海外ボランティアに参加しているのだけれど、海外からわざわざ電話をかけてくれた。『やっとかよ、おめでとう』というぶっきらぼうな言葉だったけど、祥太郎君にそう言ってもらえたことは本当にうれしかった。

美里さんと麻衣さんは、祥太郎君伝いだけれど、お祝いのメッセージをくれた。
実はあまりに嬉しくて、このことはまだ先生には言えていないのだけれど。
今言ってしまおうかな。

「……誠さん、実は麻衣さんと美里さんからお祝いの言葉もらったんです」
「え、なにそれ。このタイミングで言う?」
先生はエレベーターの中で面白いほど固まっていたが、私は構わず話を続けた。
「……おめでとうございます、心から嬉しく思います、って一言だけど、嬉しかったです」
「ああ、祥太郎伝いか……懐かしいな」
「麻衣さんはバリバリ働いて稼ぎまくってるらしいです。美里さんは婚約者がいるんだそうですよ」
「そっか、よかった」
先生は優しく笑って、私の頭をそっと撫でた。
会社の中で触られることは付き合ってから初めてのことだったので、私は少し驚いてしまった。

「……ことりって、いい名前だね」
「え、なんですか、突然」
「この前お義母さんと話したとき、名前の由来教えてもらったんだ。お義父さんがことりのことを思って、お守りのような名前になるよう願ってつけたって」
「あ、それお母さん話したんですね」
ちょっとそのことを照れくさく思って笑うと、先生は、もう一度噛み締めるように、『いい名前だ』と呟いた。


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