「先生、それは愛だと思います。」完


『はじめまして、高橋誠と申します』

『お義父さんが願ったような男ではないかもしれないけれど、俺はあなたの娘さんを守るために生まれてきた人間です』

『これから、どうぞよろしくお願いします――……』


そう言い終えてから、また深々と頭を下げた先生の後姿を見て、私はばれない様に泣いていた。
あの光景は、きっとこの先なにがあっても、私は一生忘れないだろう。

……ばれない様に泣いていたはずなのに、先生は赤くなった私の目を見て、バカだな、と言って笑ったんだ。
だから私は、涙をぬぐいながら、バカだよ、と言って同じように笑った。泣きながら笑った。

駐車場で先生のことを待って、震えながら告白した、高校生の時の自分にこの未来を見せたらいったいどんな反応をするだろうか。きっと、びっくりして腰が抜けてしまうんじゃないかな。

縁石に座って、先生が来るのを待ったあのドキドキも、
お尻から伝わる縁石の冷たさも、
好きという言葉を人生で初めて声にしたあの緊張も、忘れてなんかいない。

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